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ゆったりとした音でクラシック音楽を楽しめる小型のシステムが欲しい。タテマツ音工さんにご相談し、納得できるシステムに漸く出逢うことができました。SCAN Speak 製18W8545ウーファ、D2905-9700トゥイータをタテマツ音工さんの独自のノウハウが注ぎ込まれたトールボイ型エンクロージャに搭載したMTMシステム。私のリスニングルームでまだ誕生したばかりですが、ネットワーク、バスレフポート、吸音材を調整することで表情を変えていき、自作派の探求心も満たしてくれます。どんなシステムにまとめ上がるか本当に楽しみなシステムです。 |
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| 奈良県 H | ||||||||
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製作までの経緯 市販のシステムでは依然として気に入ったものを見つけることができませんでしたが、インターネット上では今回のScan Speakのユニットを紹介したホームページや自作スピーカシステム関連のホームページが多くあり、欧州系のユニットに興味を持ち始めました。ただ、欧州系のユニットはティールスモールパラメータのQtsの低いものが多く、Qtsの低いユニットのエンクロージャは、従来のQが0.4〜0.5といったユニットのエンクロージャと比べて内容積が極端に小さい設計ですので、こんな小さなエンクロージャで果たしてゆったりとした音が出せるのか?というのが最大の疑問点でした。 そんな時、たまたま名古屋を訪れる機会があり、MJ誌等で名前を存じていましたタテマツ音工さんに連絡してみましたら、Scan Speakのユニットは何度も手がけられて米国のハイエンドオーディオショウ等にも出品され、高い評価を受けておられているというお話しを伺うことができ、今回の18W8545、D2905-9700のMTMシステムのエンクロージャを作って頂くことに致しました。 エンクロージャの製作をお願いした時点ではScan Speakのユニットの音を一度も聞いたことがなかったのですが、別の機会に時間を作って頂いて、15W8530とD2905-9700のMTMシステムの音をリスニングルームで聞かせて頂くことができ、期待に胸を膨らませて奈良の自宅に帰りました。 |
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スピーカシステムの製作 (1)エンクロージャ エンクロージャの設計はタテマツ音工さんに100%お願いし、エンクロージャの高さと奥行き、バスレフポートのみ小生の希望を反映した設計にして頂きました。シミュレーションの結果から、内容積は38リットルが良さそうで、椅子に座ってトゥイータが耳の位置に来る高さとすると、エンクロージャの高さは120cm程度になるのですが、周囲とのバランスや(単に視覚上の問題です)、幅を23cmとしても、奥行き(内寸)が20cmを下回り、ポートの共振周波数を40Hz以下にしようとすると、直筒では成立しなくなるため、奥行き30cm、高さ91cm、幅23cm(外寸)で製作して頂くことにしました。 板材は厚み21mmのカバ材で、これで最大24cmのポートまで取り付け可能となり、ポート長を検討したいとの小生の希望も聞いて頂いて、内径75mmの円筒を後付けできる方式にしてもらいました。なお、和室なので低音が吸音される傾向にあるため、ポートは前面に取り付けて頂くことにしました。 心待ちにしておりましたエンクロージャが届いたのが8月盆休みの初日(ナイスタイミング!)、お盆休みの1週間を製作と初期調整に当てることができました。写真1がエンクロージャと部品(長さ20、21、23cmのポート3種、SOLEN製ネットワーク部品など)です。エンクロージャは小生が想像していたよりがっちりとした作りで、細部の作りや塗装の仕上げも丁寧で、まず、出来映えの良さに感激しました。写真2はユニット取り付け部の拡大です。トゥイータ取り付け部はウーファとの位相(波面)を合わせるため、取り付け面が内側に沈みこませてあります。 写真3は背面から見た内部の様子です。バッフル面を除き、全体に吸音材のミクロンウールが貼られています。トゥイータの後部に斜めに2本入れてある補強板は単に補強の役割だけではなく、内部の定在波を打ち消す役割も果たしているそうです。この辺りはタテマツ音工さんが独自に研究されて蓄積されたノウハウがあるようです。写真4はユニットを取り付け、圧着端子でリード線(AT社の2sqの平行コードを使用)を接続した状態、写真5は外観です。ポートは20cm長のものを装着しています。 |
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(2)ネットワークの製作 ウーファ(並列接続)とトゥイータのリード線をポートから取り出し、ネットワークの検討に移ります。スタート点として選定したのはタテマツ音工さんから教えて頂いたSOLEN推奨の3次バタワース型でクロスオーバー2kHzのものとしました(図1)。15W用ですが、18Wにも適用できるとのことでしたので、そのまま適用することにしました。配線は組み替えが容易にできるように、10mm厚のMDFにラグ板を立て、空中配線する方法で行いました。また、トゥイータの音量調整を行うためのL型アッテネータ(-1、-2、-3dB)をセメント型巻線抵抗で組んでMDFに配置しました(写真6)。 上記のバタワース3次のネットワークを含め、各種のネットワークを検討した結果を表1にまとめます。初期調整の結論としては、3次バタワースでは音に躍動感がなくNG。図1のNetwork 1(ウーファ、トゥイータともに2次、クロスオーバー2.5kHz)、またはNetwork 2(ウーファ2次、トゥイータ3次、クロスオーバー2.5kHz)が良いようです。トゥイータのアッテネータは小生の部屋の条件では-3dB設定がウーファとの繋がりが良いようです。 |
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(3)初期調整段階での音質 一言で言うと、端正でよく締まった高品位な音です。トゥイータの歪みが少ないので、微妙なニュアンスや余韻の表現力に優れ、ホールの残響成分もよく聞き取れます。オーケストラものでも従来のような第1バイオリンが強調される感じが少なく、トゥティーで音量が上がっても(と言っても数ワットですが)、よく締まっていますし、静かな部分での第2バイオリンやビオラの細かな動きも全体に埋もれずに再生します。低域は部屋の影響も大きいと思いますが、もう少し量感があると、オーケストラものでの帯域バランスがさらに良くなるだろうと思います。 |
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(4)ポート長、吸音材量の調整 量感の向上を目指し、ポート長と吸音材量の調整を行うことにしました。初期設定の22cm長(バッフル込み)のポートでもコントラバス、大太鼓、パイプオルガンの重低音は出ていますが、音量が低く、密閉箱に近い状態のように思われます。インターネット上で公開されていますWinIsdでポートの共振周波数をシミュレーションしますと、約35Hzとなりました。そこで少し共振周波数を高くして、38Hz、40Hzのポート長を求めたところ、それぞれ約18cm、16cmとなりましたので、まずは18cmになるようにポートを切断し、装着しました。その結果、ポートからの音量が大きくなり、量感が少し向上することが確認できました。 ここで、ポート長は一旦、18cmに固定し、吸音材の量を検討することにしました。(1)項でも述べましたように、エンクロージャ内部には定在波の発生を打ち消す役割を担う補強板が斜めに2本取り付けられています。この補強板の上面には吸音材のミクロンウールがかなり多めに貼られており、上下のキャビティが吸音材で仕切られているような印象を受けましたので、補強板の吸音材を思い切って取り去ることにしました(写真7)。この結果、低音から中低域にかけての音の抜けが向上するとともに、ポートから出る低音の音量もさらに大きくなり、大太鼓は直接音とともに空気感も少し出てくるようになりました。補強板の吸音材を取り去ったことで反射音が生じないか気になるところですが、通常の音量ではそのような問題はなさそうです。今後、もし気になるようであれば、何らかの対策を施して行きたいと考えています。 |
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(5)ネットワークの見直し この段階で再びネットワークの見直しを考えた理由ですが、これまでの経験ではトゥイータのHPFにコイルを入れると、どうしても歪みっぽい音が付帯してくることが多く、2次とすることに少し抵抗があったからです。しかし、今回の9700は優秀なトゥイータで、歪みが少ないことから、初期調整としては12dB/octを選択しました。一方、ウーファ側については、1次のLPFは今ひとつとの結論を出したのですが、これはトゥイータのHPFが2次であったからのようで、トゥイータも1次とすると、より好みの音に近づくことがわかり、聴感と単純計算を頼りに、LPF=0.38mH、HPF=9.1μFの値を選びました。ウーファのインピーダンスを4Ω、トゥイータを6Ωとして、計算上では2.1kHzにおいて-4dBでクロスしていることになります(逆相接続)。トゥイータのアッテネータは2次の場合と同じく-3dB設定ですが、トゥイータの歪み感がさらに減少し、高域まできちんと再生する口径の大きなシングルコーンのようなイメージの音です。こういう音に出逢ったのは初めてです。口径の大きなというのは、MTMがロクハンや8インチ同軸2ウェイに比べて適度に音像が拡がるということにも関係ありそうなのですが、それはさておき、いかにもトゥイータが鳴っていますよというような表情がなくなり、ナチュラルな音質です。小生がSPシステムメーカーの商品開発者なら、抜け良く聞こえる12dB/octを迷わず採用すると思いますが、それほど大音量を出さずにクラシック音楽を聴くなら、1次/1次の組み合わせの方がお奨めのように思います。室内楽もOKのようです。もちろん、L、Cの最適点は今後も検討を続けるつもりです。 なお、トゥイータを1次で使用する場合は、耐入力などの関係でf0でのインピーダンスの上昇をキャンセルするL、C直列のノッチフィルターを接続する必要があるとの文献もあり、インターネットで調べたD2905のQes=0.82、Qts=0.68、Qms=3.74という値を信じて、1.1mH+87μF+4.7オーム直列のノッチフィルターを9700に並列接続しました。単純計算ではf0の500Hzのインピーダンスを8.4Ωにまで低減できることになりますが、聴感では効果がほとんどわからず、タテマツ音工さんの「余り良い結果が得られたことがない」とのアドバイス通りの結果でした。 吸音材量、ポート長、ネットワークのL、Cの最適化は今後も進めていく予定ですが、現時点の調整でロイーネの同軸2ウェイのシステムはお払い「箱」になりました。明らかに1ランク以上の音がしています。 |
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(6)自作半導体アンプについて(アンプ自作派の方のために) これまで、差動プッシュプル+A級コンプリ+終段MOS-FETの標準的な2段増幅の回路構成(クローズドループゲイン26dB)の自作モノアンプ(2台)にCDプレーヤの出力をダイレクトに接続していました。これでNS-690Vを長らくドライブしていましたが、室内楽はそこそこの音で鳴らすのに、オーケストラものになると第1バイオリンの音が強調され、しかも歪みっぽい音になることに不満を感じていました。P-610MB、ロイーネをドライブしても同じ傾向があり、2段増幅アンプの本質的な欠点ではないかと考え、回路を見直すことにしました。インターネットで自作アンプのホームページ等を調べていましたら、1段増幅の回路が紹介されており、それらを参考にプリント基板のパターンを起こし、5種類ほど試作した回路の中から、第1バイオリンの誇張感や歪み感が最も小さい電流帰還型のものを選定し(図2)、今回のシステム導入の機に作り直しました。すなわち、ソース接地のコンプリメンタリJ-FET(カスコード接続)のドレイン出力をウィルソン型カレントミラー負荷で受け(出力側をカスコード接続)、MOS-FETドライブ段、パワーMOS-FET段に伝送する方式の回路です。この回路の欠点は初段のコンプリJ-FETのアンバランスが出力にDCオフセットとして現れる点で、本機ではオペICを使ったアクティブ型のDCサーボ回路を適用し、出力オフセットを±3mV以内に抑えるようにしています。初段にJ-FETの差動プッシュプル回路を適用し、電圧帰還型としても1段増幅の回路を構成でき、DCオフセットの点では大変有利になりますが、オーケストラものでバイオリン群の音がにじみ、歪みっぽい音が付帯してきますので、あまりお奨めできない印象です。何れにしても2段増幅回路はオープンループゲインが高すぎるので、閉ループゲインを実用レベルの20〜30dBとするとNFB量が極端に多くなります。その結果、高域での位相回転の補償が必要になりますが、これがなかなか素人には処理が難しく、カラーレーションの原因にもなるので、やはり根元的に位相回転の少ない回路を採用するのが望ましいように思います。今回の電流帰還型1段増幅回路は私のような素人が実装を行っても超高域発振などのトラブルは皆無であり、作りやすさの点でもお奨めできます。 電源はパワートランスがタンゴDC65(残念ながら廃業されたそうですが)、整流、平滑はGBPC2504と33,000μ×2のごく標準的なもので安定化は行っていません。終段デバイスは2SK1530/2SJ201のシングルプッシュ、アイドリング電流は300mA、初段は2.0mAで動作させています。写真6のネットワークの後方に写っているアンプが本機です。改造前はBTLアンプでしたので放熱器は2つ取り付けたままになっています。 |
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(8)ネットワークの見直し(その2) (5)ではLPF=0.38mH、HPF=9.1μFの6dB/octのネットワークを選択しました(ネットワーク3)。12dB/octに比べると「抜け」は劣りますが、シングルコーン的なナチュラルな質感が得られたことが、この組み合わせを選択した理由です。しかし、依然として量感が不足しており、改良を続けることにしました。まず、ポートを18→16cmに短くすることから検討を始めましたが、低域が改善されるより、中域が明るくなる傾向の方が強く、全体としてトゥイータが勝った音質になりましたので、HPFの9.1μFを7.8(6.8と1.0のパラ接続)→6.8→4.7μFと減らして行き(何れも指月電機の黄色いフィルムコンデンサを使用しました)、最終的に6.8μFで落ち着けました。 HPF=6.8μF(負荷6Ω)の場合、4kHz(-3dB)クロスですので、ウーファを4Ωとすれば、LPF=0.16mHとなります。そこで、この組み合わせで鳴らしてみましたが、非常に安っぽい音になり、試しにLPFをなくしてスルーにすると、その安っぽさがさらに強調されました。 この問題はLPFを0.22mHにすることで、すんなり解消することがわかったのですが、0.22mHでは3kHZ(-3dB)クロスですので、中抜けが心配です。しかし、HPFの6.8μFに0.47μFを足すだけでもトゥイータに余計な音がついてきますので、Cは6.8μFとして、トゥイータの音量を少し上げてバランスを取ろうと考え、アッテネータの値を見直したのがネットワーク4です。ウーファと並列に接続した4.7μFと8.2Ωは、聴感上ではその効果がわかりませんが、数kHz以上の周波数でウーファのインピーダンスが上がり続けるのを補正するのが目的で接続しています。 このネットワーク4を10mm厚のMDFにラグを立てたボードに配線し、タッピングネジでエンクロージャの底板に固定し、各ユニットへのコードもできるだけ短く配線しました。 (9)ポート長、吸音材の再調整 さて、低音の量感を出そうとしてポートを16cmに短くしたら中域が明るくなり過ぎてしまい、ネットワークを見直してHPF=6.8μF、LPF=0.22mHに辿り着きました。これで中域の問題は解消しましたが、大編成のオーケストラ曲ではやはり量感が不足気味で、特に、コントラバスの連続音が弱い感じです。 吸音材は一旦取り外すと、再度貼り付けるが面倒ですので、ポートを16→13cmと短くして行き、9cmまで検討しました。9cmでは共振周波数が>50HZとなり、量感は出てきますが、モアモアした低音になってしまいます。しかし、中間の13cmでは本質的な改善にはならないと思いましたので、タテマツ音工さんに吸音材の外し方をアドバイスして頂くことにしました。 タテマツ音工さんのアドバイスは@共振周波数は35〜38Hzで調整するのが好ましいので、思い切って吸音材を減らしてみてはどうか?(ポートを長くする時は吸音材を減らし、短くするときは吸音材を多くすると良い)、A吸音材はユニットから遠い位置から取り外していくと効果的である、B吸音材の再取り付けは、ステープルでなくともプラスチック頭(ギボシ状)の画鋲を使うと良いということでした。 @の共振周波数35〜38Hzはポートを元の22cmに戻せば良いのですが、吸音材の大部分を取り外してしまう必要がありそうでしたので、Aのユニットから遠い位置から取り外す方法を検討することにしました。底面はネットワークのボードを取り付けましたので、吸音材なしの状態となっています。そこで、片方の側面の底板に近い位置から徐々に吸音材を取り外して行きました。 この吸音材の取り外しは確かに効果的で、ポートの長さを変えるより、素直に量感が向上することがわかり、最終的には補強板の部分まで吸音材を取り外しました(写真A)。 こうすると、下側のウーファの片面には全く吸音材がない状態になりますが、エンクロージャ内での定在波らしき音は通常の音量では全く感じられません。吸音材をどこまで減らせるのかという実験は行っていませんが、側板の吸音材を両面とも取り外すのはよくないのではないかとの考えから、吸音材の取り外しはここでまでにしておき、残した吸音材はギボシ状のプラスチック頭のついた画鋲で押さえつけ、できるだけ吸音材とエンクロージャの間に隙間ができないようにしました(写真B、C)。これは、吸音材をエンクロージャとの間に隙間ができるように貼りつけると、吸音材をたくさん入れたのと同じ効果が得られるという文献を見たことがあるからです。この吸音材の押さえつけによる効果は、よくわからない程度のものですが、少しでも吸音効果を低減すべく裏板の吸音材も画鋲で押さえつけ、できるだけ隙間がなくなるようにしました。 一方、ポートは13.5cm(バッフル厚込み)にしました。共振周波数はタテマツ音工さんの推奨値より高いですが、16cmにすると量感が不足してきますので、13.5cmを選びました。 これらの検討の結果、大太鼓の音に畳を振動させる押しが出ていますし、コントラバスの連続音の再生もまずまずです。少なくとも(7)項のCDでの試聴では量感不足は感じられなくなりました。これからも細かな調整を続けていきたいと思います。 以上 |
| ■LCネットワーク 実験表もごらんください。 |
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(10)マルチアンプ化の実験 LCネットワークで十分満足できる結果が得られましたが、以前からの興味を持っていましたマルチアンプ方式を検討することにしました。遮断特性はLCネットワークとの比較を行う観点から6dB/octとしました。デバイディングはパッシブのCR素子で構成しますが、信号源インピーダンスをできるだけ低くする、音量調整用のマスターボリウムを設けたいなどの点から、図の方式としました。 CDプレーヤの出力を利得0dBのインピーダンス変換用のバッファアンプに接続し、CR素子でデバイディングして、低音用、高音用パワーアンプに接続するものです。トゥイータのレベル調整は高音用アンプの入力ボリウム(ALPSのデテントタイプ)で行います。CR素子の抵抗はコーアの金属皮膜型(1%
1/4W)、コンデンサは松下電子部品のポリプロピレンタイプ(1%)で、パワーアンプへの接続ケーブルの静電容量の影響を受けないように、CR素子は各パワーアンプの入力部に実装しました。 低音用パワーアンプは前出のアンプを使用し、高音用は同一回路で電源トランスにトロイダルトランスを用いたモノーラルアンプを使用しています。バッファアンプ基板はアルミシャシーに収納していますが、現時点のものはバラックに近い状態です。 実験はLCネットワークと同じ、LPF=3kHz、HPF=4kHzから開始しましたが、これは明らかに中抜けの音でした。そこで、HPFのカットオフ周波数も3kHzとし、聴感フラットを得ました。トゥイータのレベルは-2.0dBでウーファとバランスが取れました。 さて音質ですが、まず、中低域が太くなりました。中域はホーン型のようなロードのかかった音ではありませんが、音の芯が出て高密度です。硬さやキツさは感じられませんので、中高域の歪が大幅に低減しているように思います。トゥイータのアッテネータを-2.0dBにまで上げられるようになったことで(LCネットワークでは-3.6dB)、残響成分のレベルが上がり、奥行き感が増しています。 録音状態の良いCDでは、第1ヴァイオリンのパートに柔らかさが加わり、その後方に第2ヴァイオリンのパートがいるのがわかります。ヴィオラのパートが静かに細かく刻む弱音も明瞭で、チェロも太くなり、高調波成分もよく出ています。 ここまで音が変わるか?というのが率直な感想です。もし、立松様が近所に居られるなら、一度聞いてみて下さいと言いたくなるくらい表現力が向上しています。 トゥイータのレベル調整用のボリウムは固定抵抗のアッテネータに変更するつもりです。また、LCネットワークの実験で当初選定した12dB/oct 、2.5kHzクロスでマルチアンプ化を検討するなど、暫くはマルチアンプ方式を追求してみたいと思います。 小型のスピーカシステムでマルチアンプ化するのは馬鹿げているという意見もあろうかと思いますが、やってみる価値は十分にあると思います。 |
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(11)マルチアンプ化の実験(その2) 12dB/oct、2.5kHzクロスの実験を行うべく、図Bのように、オペアンプICを使用したバタワース型のアクティブフィルタを検討しました。トゥイータは逆相接続で、レベルは6dB/octの場合と同様に-2dBでバランスが取れました。このデバイダは中域の芯が弱まっておとなしい音です。中低域の太さは6dB/octと共通していますが、躍動感がやや損なわれるようです。オペアンプIC、12dB/oct、2.5kHzクロスの何れに原因があるのか判断が難しいところですが、CR素子を変更して6dB/octの場合と同じ3kHzクロスで試聴した結果、まだ少しおとなしいのかなという印象は残るものの躍動感の問題は解消しました。ただ、音質以外の問題として残留ノイズが気になります。トゥイータに耳をそばだてると聞こえる程度のレベルですので、実用上は問題ありませんが、高音用アンプのボリウムを絞ると残留ノイズが減少しますので、発生源はオペアンプICです。 そこで図Cのように、オペアンプICをバッファアンプ回路と同じj-FETのコンプリSEPPに変更して試聴することにしました。CRの定数は3kHzクロスのバタワース型です。この回路は残留ノイズの発生は少なく、パワーアンプ単体との違いがわかりません。音質の方はオペアンプICを用いた回路よりストレートで、6dB/octの音に近づき、中域の芯がほどよく加わるので解像度が向上します。高域の柔らかさの点ではオペアンプICのデバイダの方が耳触りよく聞こえますが、これはオペアンプICによるカラーレーションと考えられますので、図Cの方式の方が良いと思います。6dB/octのデバイダとの比較を含めても総合的には図Cの方が優れていると思います。 |
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(12)マルチアンプ化の実験(その3) その3ではGIC型デバイダにトライしました。はしご型LC回路の片側終端無損失フィルタで、バタワース型の3次、2次のLPFを原型として、Bruton変換によりFDNR(周波数依存性負性抵抗)を用いたLPFを構成し、一方、もとのLPFを周波数変換してHPFを導き、GIC回路でHPFを構成します。図Dが3次の回路図で、GICとFDNRの定数はスケーリング前の値を示してあり、抵抗の単位はΩ、コンデンサの単位はFです。さて音質ですが、3次バタワースは必要な情報が削り取られたような印象を受けましたので、2次バタワース型に変更して試聴することにしました。 音質は図Cの回路とよく似た音ですが、トゥイータの歪がさらに少なくなり、弦の実在感が向上します。例えば、ベートーヴェンの交響曲第1番(ドホナーニ/クリーヴランド管、TELARC CD80187)、第4楽章導入部の音階的旋律の部分では、第1ヴァイオリンが奏でる弱音と、弓が弦を弱く擦る音が混ざり合った柔らかな音色。これは生でないと聞けない音と考えていましたが、結構生々しく表現しています。演奏している空間が垣間見えるような瞬間があり、GIC型フィルタは低歪との評論は当たっているように思います。トゥティーでも高域が砕けず、切れがあり、締まっています。図Cのデバイダより優秀だと思います。 オケの高音弦については、ソースによる差はあるものの、ヘッドホンで聞くと歪んでいないのに、トゥイータから出てくる音には歪が付帯しているように感じることが多かったのですが、この問題の解消に向けて大きく前進できた感じがします。 現在、上記のGIC型デバイダは穴あきユニバーサル基板に部品実装しており、ジャンパー線だらけの状態ですので、基板パターンを起こして部品実装したものに改める予定です。なお、図Cのアクティブフィルタは参考例が多くあり、理屈通りに遮断特性が得られるものとして、測定器での測定は行っていないのですが、GIC型デバイダは適当な参考例を見つけることができなかったので、遮断特性を実測して確認の予定です。エンクロージャの微調整も再度検討したいと思います。 |
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